今年何度も読み返した3冊の本 | 不問日報-号外

2011年12月31日土曜日

今年何度も読み返した3冊の本


今年まともに読んだ本は大体40冊でした。

「まともに読んだ」というのは、読み始めて「何か違うな」と思って見切りをつけてしまった本が結構あったためです。私はamazonや楽天ブックスを使うことが多いのですが、その時々で読みたいと思って買ったはいいものの、そのまま放置…という展開も数知れずでした。

かつては大量に読むことを志向していた時期もありましたが、あまり身になっていないな…と虚しさを感じた経験があったため、今年は良いと思った本を繰り返し読んで、身に染みこませることを心がけてきました。そんな中で今年何度も読み返した3冊の本が以下。
  1. 『現代語訳 論語と算盤』渋沢栄一著(ちくま新書)
  2. 『暮らしのヒント集』暮しの手帖編集部著(暮しの手帖社)
  3. 『マネジメント【エッセンシャル版】』P.F.ドラッカー著(ダイヤモンド社)
それぞれ、良かったところや印象的だったところを引用してみます。



『現代語訳 論語と算盤』渋沢栄一著

「日本実業界の父」と呼ばれ、明治期から約470社の企業創立・発展に貢献してきた渋沢栄一の著。今のJRや東京海上火災、日本郵船、東京電力、東京ガス、サッポロビール、王子製紙、帝国ホテル等、誰もが知る数々の企業は、渋沢栄一が関わっています。

三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎から持ちかけられた独占事業を蹴り、あくまでも国を富ませることの大義を貫きました。渋沢が三菱や三井、住友といった財閥をつくっていたら、日本の資本主義のかたちは今とは違ったものになっていただろう、とあとがきで書かれています。

一方、子どもが30人以上はいたというから只者ではありません。当時の風習で、いわゆるお妾さんを数多く持っていたようです。公私ともにスルーしがたい人物と言えます。


この本の端は多数の折り目がつきましたが、中でも印象的だった内容を1つだけ抜き出すならここでしょうか。
成功と失敗は、自分の身体に残ったカス
人は人としてなすべきことを基準として、自分の人生の道筋を決めていかなければならない。だから、失敗とか成功とかいったものは問題外なのだ。かりに悪運に助けられて成功した人がいようが、善人なのに運が悪くて失敗した人がいようが、それを見て失望したり、悲観したりしなくてもいいのではないかと思う。成功や失敗というのは、結局、心をこめて努力した人の身体に残るカスのようなものなのだ。
P.217
世間では成功者や失敗者がよく取り上げられ、成功するための方法、失敗しないための方法など、成功/失敗という見方の情報があふれています。そういうものを見る度に、関心して見習おうと思ったり、危機感を感じたりすることがありましたが、どこかに違和感もありました。

そこで成功や失敗というのはカスみたいなものだ、という一言に出くわし、ガガーン。思うことはいろいろありましたが、自分として納得のいく基準を持っているか否かが重要なのだと感じました。幸せと同じで、基準は人によって千差万別。自分の軸をつくり、持っているかどうかが、自分の生き方に必要なのだと思います。

その他、経営や働くことについて多くの示唆を得ました。もう100年近く前の話ですが、まったく古さを感じさせない1冊です。



『暮らしのヒント集』暮しの手帖編集部著

広告を載せずに60年も続いている雑誌『暮しの手帖』の連載が書籍されたものです。日々を美しく暮らすためのヒントが、469個も紹介されています。

内容は実に様々ですが、日々の何気ない暮らしで実践できることや考え方が紹介されています。放っておくとルーチン化してしまう日常ですが、ふと立ち止まって「これをやってみよう」とか、「そうか、そういう考え方もあるな」と思ったり、考えたりするきっかけをもらいました。

1個1個のヒントは100文字にも満たないものが主体ですが、1つのヒントについて半ページほど考え方が書かれているものもあります。私はふと気になったとき、適当にページを開いてヒントと出会う、というのが専らの楽しみ方でした。 

実践的なところでは、
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起床の30分前にラジオや音楽をかけてみましょう。寝床でぼんやりと耳を傾けているうちに目が覚めてきて、気持よく起きることができます。
というものがあり、実践しました。実際のところ、タイマー式の音楽機器がなかったので、iPhoneの目覚ましアプリに音楽を設定したり、テレビをつけたりして代用しました。

やってみると、確かに以前よりも目覚めがスムーズになるのを感じました。テレビについては色々試した結果、民放の賑やかな感じの番組はあまり気持ちが良くなく、NHK等の淡々とした余計なBGMのない番組が良いと気づきました(好き嫌いがあると思いますが)。今のところNHK BSがベスト。笑

その他、考え方の面では以下が印象に残りました。
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大変でしょうが、苦労は人を洗練させます。洗練された人には、和やかさ、やわらかさ、品格がそなわります。

私たちは、苦労を重ねた人の笑顔がどれだけ美しいものが知っています。不思議なもので、苦労にはその人を美しくする力があるのです。苦労を重ねた人にだけそなわる洗練は、人をしあわせにもしてくれます。
何かをよく知り賢い人ほど、言葉少なく控えめで、えばらず前に出ず、温和です。そういった人ほど、実は、人一倍の苦労を経験し、乗り越えてきているのです。
苦労はあなたを苦しめるものではない、ということを知りましょう。もし、あなたが、苦労をせず、苦労から逃げてばかりの生き方だったとしても、がっかりすることはありません。いくつになっても、遅すぎるということはないのですから。
このような価値観が通用しない場もあると思いますが、一人の人としては共感を覚える考え方です。ふと、過去に出会った方々の所作や笑顔を思い返しました。

誰しも何らか苦労をすると思いますが、苦労を前向きにとらえる考え方としても発見でした。「苦労は買ってでもしろ」と言いますが、それは人が洗練されていくための過程として欠かせない要素だから、ということなのでしょう。

この『暮らしのヒント集』は続巻も出ています。
決まりきった毎日がひたすら続いてる、と感じている方は、手にとって読んでみると、日常がちょっと変わるヒントが得られるかもしれません。



『マネジメント【エッセンシャル版】』P.F.ドラッカー

ビジネスの書籍としては各所で名著と言われるドラッカーの『マネジメント』、そのエッセンシャル版です。ドラッカーの本は何冊か読んできましたが、この本が今のところ一番刺さっています。(タイミングというのもありますが)

この本、読み進める度にウムーと立ち止まってしまい、なかなか読み終わりませんでした。一回通読して読み返すという方法もあったはずですが、読み飛ばすことができないのです。

ゆえに、印象に残ったところを抜き出すのはなかなか難儀です。
この本の影響で、私が今年仕事をする中で度々意識したのは「成果」の二文字。そこに関連するものでは以下のようなものがありました。
成果を中心に考える
あらゆる組織が、事なかれ主義の誘惑にさらされる。だが組織の健全さとは、高度の基準の要求である。目標管理が必要とされるのも、高度の基準が必要だからである。
成果とは何かを理解しなければならない。成果とは百発百中のことではない。百発百中は曲芸である。成果とは長期のものである。すなわち、まちがいや失敗をしない者を信用してはならないということである。それは、見せかけか、無難なこと、下らないことにしか手をつけない者である。成果とは打率である。弱みがないことを評価してはならない。そのようなことでは、意欲を失わせ、士気を損なう。人は、優れているほど多くのまちがいをおかす。優れているほど新しいことを試みる。
P.145
反省すると同時に、勇気ももらえる一節でした。
今、改めて読んでみても「成果」というところでは、短期的な売上を気にし過ぎてしまっていたかもしれない、と反省してしまうなど。

私は今年、例年に比べれば新しいことに取り組んだ年でしたが、うまくいかないと思うことが多々ありました。もちろん、ある程度うまくいって、いい流れをつくる一助はできたかもしれないのですが、「卓越した成果」というところを目指すには、まだまだ今期よく取り組まなければならないと感じます。来年も引き続き、新しいことを試みる姿勢でいきたいと思います。

ドラッカーの本は経営に関する内容が多いように見えますが、組織で働く人なら、業界、業種、役職を問わず読む価値のある本ではないかと思います。



来年は…
どんな良い本との出会いがあるでしょう?
今年は小説をあまり読まなかったので、小説に少し意識的に触れていきたいと思います。正確には、今年は『坂の上の雲』を再読したのですが、8巻もあるので、これで今年の小説枠の時間をほぼ使いきりました。あとは『小説 上杉鷹山』。自分としては少し意外なのですが、歴史小説を中心に読みました。

みなさまも繰り返し読んでいる本などありましたら、ぜひ教えてください。
では、良いお年を。