2011年Web業界10大トピック 〜おせちの話から〜 | 不問日報-号外

2011年12月29日木曜日

2011年Web業界10大トピック 〜おせちの話から〜

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昨日、仕事納めでした。
かつては大晦日まで納まらないとか、正月またいでも納まってないとか、そんな光景もありました。職場に紙で神社をつくってお参りをしたりとか。懐かしい。

「2011年が終わるんじゃない。2012年が始まるんだ。」

という明言が私の目前をかすめましたが、今年は個人的に振り返りを大事にする1年だったので、Web業界の2011年を振り返ってみました。私はWeb制作会社に勤めているため、そちら側に寄っています。


No.10 おせち事件(炎上)

2011年のファーストインパクトは、広告と全然違うひどすぎる「おせち」の事件でした。2010年の大晦日から騒ぎが始まり、食べログ、2chまとめサイト、ついにはテレビと、お正月から大炎上。
販売したグルーポンも取りざたされ、2011年には流行が予想されたクーポンビジネスは、期待されたほどの盛り上がりはなかったように思います。

今年はTwitterをきっかけにした炎上が多数ありました。企業(自治体)が関係するところでは、
  • アディダス:従業員が契約スポーツ選手に対する不適切なツイートで炎上
  • ウェスティンホテル東京:従業員が芸能人のお泊りデートをツイートして炎上
  • 北海道長万部町:ゆるきゃら「まんべくん」が歴史認識で際どいツイートをして炎上
など。

炎上は組織にとってダメージなのはもちろん、従業員や関係者も人生を棒に振るといっても過言ではない顛末を迎えるものもありました。企業や従業員を守るため、「ソーシャルメディアガイドライン」を策定し、社内教育を始めた企業も多かったと思います。

企業のソーシャルメディア活用はもはや一般的になってきましたが、「リスク対策」の話は必ずセットで出てきます。私は昨年のTwitter全盛期から色々な案件に関わりましたが、守りの意味でも、攻めの意味でも、ソーシャルメディアに「土地勘」のある担当者が欠かせません。


No.9 経営者・企業の大きな動き

Web業界に限定できませんが、やはりAppleのCEOスティーブ・ジョブズの他界は、業界関係者に大小の影響を与えたことでしょう。制作・開発現場でMacを愛用する方は多いでしょうし、iPhone、iPadは私の職場にも溢れています。私自身、Web業界に入る原点はMacとの出会いだったと思っていますので、外しがたいトピックです。

企業関係では、
  • NHN Japan、ネイバージャパン、ライブドアが経営統合
  • GREEの躍進、グローバル展開の加速
  • DeNAの躍進、球団経営、南場社長の退任
など。

ソーシャルゲームで著しく業績を伸ばしているGREEとDeNAは今年存在感がありましたね。今やテレビCMが当たり前のように流れています。業界の躍進にともなってスマートフォン関連の人材不足が進み、新卒の年収が最大1,500万円というバブリーな一面が垣間見えることも。GREEとDeNAはちょいちょい衝突があるようですが…来年はどうなるのでしょう。

サイバーエージェントも、ネット広告代理業からスマートフォン関連事業に力を入れつつあるようですし、来年はますますスマートフォン関連企業が熱くなりそうです。


No.8 IE6、ついに爆発(ブラウザ関連)

Web業界にいる方なら殺意を覚えたことが二度や三度はある、と言っても過言ではないはずのInternet Explorer 6が、来年から自動アップデートされるとの発表がありました。
世の中では何かと苦しい話題の続いた2011年、2012年のWeb業界に一筋の光が差し込んでいると言えましょう。これで実家や知り合いの家のPCを密かにアップデートしていく、という(善意の)工作員活動からも開放されます。[謎]

個人的には自動アップデートがどれくらいの範囲と効力を持って実行されるのかが見えないため、今のところは心のなかでウヒヒと思う程度にしています。制作会社に勤める身からすると、お客様の企業にあるPCがアップデートされるかどうか?が、実務上の懸案であるのが正直なところです。

あとは
  • Google ChromeがFirefoxのシェアを抜く(全世界)
  • Firefoxが怒涛のバージョンアップ
など。

Google Chromeはスピーディな動作が素晴らしく、今年、私の周辺では利用率が急上昇しました。シェアでFirefoxを抜いたのは全世界の調査で、日本国内ではまだまだですが、長い目で見るとFirefoxを抜く日はそう遠くないかもしれません。

そんなFirefoxは、「どうした?」というくらい、今年はバージョンアップを重ねました。Chromeに対する危機感の表れなのか、何なのか。「親戚の子どもより成長が早い」とか、「アドオンが対応してないよぉ、うわぁぁぁぁん」とか、そんな声も聞こえてきました。


No.7 ソーシャルメディア

ざっくりですが、今年はこれなしには語れない年でした。
企業のキャンペーンサイト制作の多くにソーシャルメディアが絡んできましたし、「とりえあえず入れてくれ」という勢いだった印象すらあります。来年度の動きとしても、この傾向はまだ続くでしょう。代表的なところとしては
  • Facebook(今年の主役)
  • Twitter(昨年の主役)
  • mixi(企業活用としてはまだ…)
  • Google+(来年の注目)
  • LinkedIn(来年の注目)
今年はFacebookが主役だったのではないでしょうか。昨年はTwitterが主役でしたが、今年はもはや当たり前のレベルに位置づけられていた印象があります。来年は、とりあえずSEO効果を見込んでのGoogle+や、人事活用系のLinkeInが気になる存在です。

一方、国内大手mixiは
  • mixiページ
  • ソーシャルバナー(ナイキとタイアップ)
  • ソーシャルラジオ
  • Twitterとの連携強化
  • mixiゲーム
など、振り返ってみると色々な動きがあったと思いますが、個人的な実務レベルではまだ様子見状態です。

あとはfoursquareやロケタッチ、Facebook Placesなどの位置情報系も企業活用の事例が出ていましたね。来年は「O2O」(オンライン to オフライン)が注目ワードの一つですので、今年よりも飛躍するかもしれません。
マイナーどころではTumblrもちょっとずつ使われてきていますし、iPhone用のカメラアプリのInstagramを使ったキャンペーンもローソンが実施していました。


No.6 Twitter

No.7の「ソーシャルメディア」で入れてしまいましたが、だいぶ一般化が進んだという意味でTwitter。

やはり日本国内で脚光を浴びたのは3月11日の震災時でした。携帯電話や携帯メールがつながらない中、Twitterは連絡手段として有効に機能していたころが大きかったのでしょう。私の肌感覚としても、世間一般の方に広く認知されるようになったと感じます。著名人や芸能人の利用も一般化をあと押ししましたね。

最近のネタでは『天空の城ラピュタ』がテレビで放映された際、「バルス!」が瞬間ツイート数で世界記録を達成するなど、このネット界隈独特の盛り上がりは面白いですね。テレビとTwitterの相性は良いなと感じることが、今年はポツポツありました。

Twitterは今年5周年。リニューアルもありました。
最近では、
  • ブランドページ開始(一部企業のみ)
  • 新しい広告形態
  • 公式アクセス解析ツールの発表
などが記憶に新しいところです。
最後のアクセス解析ツールはその後どうなったのでしょう?


No.5 震災

3月11日、職場で一斉に鳴り響いた緊急地震速報の音が忘れられません。

企業が一斉にテレビCMを自粛したことからも分かる通り、Webサイト周りもキャンペーン関連の企画は一律見送り。広告、Web関連企業も大きな影響を受けました。一方、震災時(緊急時)のサイト対応について、深く考えられるきっかけにもなったことと思います。

震災や原発事故に関するWebサイトも様々できました。
  • 世界中から励ましのメッセージが届くサイト
  • ボランティアをマッチングするサイト
  • 募金ができるサイト
  • 放射能の影響を可視化するサイト
など、いろいろありました。

震災でTwitterの一般化が進んだ件はNo.6で書きました。東京電力や内閣を始め、企業や自治体もTwitterで情報発信するケースが多かったですね。情報源として評価される一方で、デマの流布を助長するといった側面もあり、メリット・デメリットの理解も進んだかもしれません。


No.4 HTML5+JavaScript+CSS3

震災という大きなくくりの直後に、いきなり細かい話に転換。
業界内では例えばGoogleが強力に推し進めることを宣言していた通り、数年前から注目されていましたが、具体的な事例が増えてきたのは今年からだったのではないでしょうか。業務レベルでは、昨年はほとんど耳にしませんでしたが、今年は耳にする機会が増えてきました。

ブラウザ依存の激しい技術ゆえ、実用性の面で課題があったと思いますが、スマートフォンに搭載されているブラウザが概ね対応していることもあり、スマートフォンの普及と比例して注目されつつあるように感じます。

スマートフォン向けのネイティブアプリを経験している企業にとっては、同技術を使ったウェブアプリに期待が寄せられている面もあるかもしれません。
ネイティブアプリはメンテナンスやiOS/Androidの別個開発等、運用やコストの面で投資対効果が得にくいと感じている企業が多いのではないでしょうか。もちろん、双方にメリット・デメリットがあるので一概には言えませんが、来年はウェブアプリの事例が徐々に顔を見せると思われます。


No.3 モバイル向けFlashの開発終了

Flashプレイヤーを提供するアドビ自身がモバイル向けの開発を終了し、HTML5に注力するとの発表を行いました。

一般ユーザーからするとどうでもいいことですし、Flashオワタなどと評するのもおかしな話ですが、業界的にHTML5のニーズが増えることを決定的に感じさせるニュースだったとは思います。

技術を提供する側としては、FlashなのかHTML5なのか、クライアントの目的や実現したいことを汲み取りながら、適切な提案ができるように両者の理解を深める必要があります。

新しい技術、新しいサービスが盛り上がるとき、得てして「◯◯を使って何かしたい」という手段の目的化が増えますが(それはそれで応えないといけないわけですが)、本来の目的を見失わないよう注意したいところです。Flashが有用な技術であることに変わりはありません。CityVilleが遊べないので、私はiPadを売り払いました。


No.2  スマートフォン

世間では「Androidってauのスマートフォンのことでしょう?」という話が出ているそうですが、今年はスマートフォンのユーザーが一般に広まっていった年でした。電車内を見ても、スマートフォンを片手にしている人が本当に増えたなと実感します。

各キャリアからの新機種発表も大半がスマートフォンです。キャリアにとってみれば、フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)よりも通信費が稼げる点で顧客単価が上がる以上、当然の戦略なのでしょう。インフラの負荷も増えますが。

年初頃のスマートフォンはワンセグやおサイフケータイの機能がないといったことがありましたが、最近は「全部入り」のスマートフォンが出始めています。ガラパゴスってなんだっけ?と。らくらくホンとスマートフォンの二極化が進むのでは、などと思ってしまいます。

Web関連は当然の如く影響を受けますが、スマートフォンの対応というと色々あって何をしたらよいのやら・・という悩みが多いようです。大きくは以下のような選択肢があるでしょうか。
  • アプリ開発
    ーネイティブアプリ
    ーウェブアプリ
  • サイト最適化
    ー専用サイト新規開設
    ー既存サイト改修
    ーCMSのカスタマイズ
    ーコンテンツ変換サービスの導入
それぞれメリット・デメリットがあり、実際にはさらにブレイクダウンされていくので確かに悩まれるのも無理はないかもしれません。企業が既に持っているコンテンツの資産状況も関わりますし、大規模なサイトほど中長期的な視点が必要です。

「スマートフォンの対応」と書きましたが、来年はタブレットの存在感も徐々に増してくるでしょうから、「マルチデバイス対応」と言った方が適切ですね。ユーザーの様々な閲覧環境に対応するための「レスポンシブ・ウェブデザイン」や、「UIデザイン」、「UXデザイン」というキーワードが、来年は今年以上に増えてくるでしょう。


No.1 Facebook

自分が仕事上置かれている立場も関係しているのですが、今年は毎日のようにFacebook、フェイスブック、FaceBook、フェースブック・・とこの単語を聞かない日はないに等しい状況でした。もうお腹いっぱいです。

早い企業は2010年から活用を始めていましたが、映画『ソーシャルネットワーク』の公開などもあってか、一般的な認知も拡大し、今年は企業の利用がだいぶ広がりました。Facebookの公式発表によれば、日本のアクティブユーザーは2011年9月で約500万人。いろいろな調査会社が数字を出していますが、恐らく1年で倍以上は増えたと思われます。

今年でだいぶ普及した感がありますが、来年前半もしばらくは企業利用の拡大期が続きそうです。

今後気になる点としては以下でしょうか。
  • Facebookアプリのスマートフォン対応
  • 写真へのタグ付、チェックイン等の活用、リアル連動
  • Facebookのポリシー・ガイドライン

Facebookアプリのスマートフォン対応
1点目。Facebookアプリの事例で、「アプリの利用やプレゼント応募がスマートフォンからできない」というユーザーの声が散見されました。
一部事例ではスマートフォンに対応していますが、ユーザー数増加と共に、来年はもっと必要性が増していくでしょう。スマートフォンへの対応いかんで、「いいね!」やコメントの数が変わってくるはずです。

写真へのタグ付、チェックイン等の活用、リアル連動
2点目。Facebookの機能として写真のタグ付やチェックイン等がありますが、企業の活用事例としてはまだこのあたりをつかった取り組みは皆無か少数派です。
Facebookユーザーのリテラシーと比例してくるところかもしれませんが、来年はこのあたりの機能を使ったものがもっと出てくるのではないでしょうか。有楽町ルミネの事例では、リアルいいねボタンの取り組みがあったように、リアル連動の活用も増えていくように思います。

Facebookのポリシー・ガイドライン
3点目はちょっとお固いですが、今年出た主だった企業事例を見ていると、7割がた何らかFacebookのポリシーやガイドライン、利用規約に違反しているように感じました。
違反していても、多くの場合実害はないと思いますが、大手企業は多かれ少なかれ信用に関わるので最低限の注意が必要と考えます。コカコーラの「スゴイ自販機」アプリが開発アカウントの複数人使い回しで突如停止した、などというものはレアケースでありましたが。


まとめ
・・長かった。プライベートでこんなに長文を書いたのは久しぶりです。6時間くらいかかりました。普段からブログ書いている方を尊敬します。

結論としては、「ソーシャルメディア」と「スマートフォン」に集約される1年だったな、というところでしょうか。近しい業界にいらっしゃる方は今年1年、いかがだったでしょうか。

性格上新しいもの好きな私はそこそこ楽しんだ1年ですが、Facebook関連で開発をしている人たちは、日々変わるFacebookの仕様により、天然のアイシャドウを顔面に実装していたような気がします。お疲れさまでした。

来年の今頃は何を振り返っているのでしょう。


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