2011 | 不問日報-号外

2011年12月31日土曜日

今年何度も読み返した3冊の本


今年まともに読んだ本は大体40冊でした。

「まともに読んだ」というのは、読み始めて「何か違うな」と思って見切りをつけてしまった本が結構あったためです。私はamazonや楽天ブックスを使うことが多いのですが、その時々で読みたいと思って買ったはいいものの、そのまま放置…という展開も数知れずでした。

かつては大量に読むことを志向していた時期もありましたが、あまり身になっていないな…と虚しさを感じた経験があったため、今年は良いと思った本を繰り返し読んで、身に染みこませることを心がけてきました。そんな中で今年何度も読み返した3冊の本が以下。
  1. 『現代語訳 論語と算盤』渋沢栄一著(ちくま新書)
  2. 『暮らしのヒント集』暮しの手帖編集部著(暮しの手帖社)
  3. 『マネジメント【エッセンシャル版】』P.F.ドラッカー著(ダイヤモンド社)
それぞれ、良かったところや印象的だったところを引用してみます。



『現代語訳 論語と算盤』渋沢栄一著

「日本実業界の父」と呼ばれ、明治期から約470社の企業創立・発展に貢献してきた渋沢栄一の著。今のJRや東京海上火災、日本郵船、東京電力、東京ガス、サッポロビール、王子製紙、帝国ホテル等、誰もが知る数々の企業は、渋沢栄一が関わっています。

三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎から持ちかけられた独占事業を蹴り、あくまでも国を富ませることの大義を貫きました。渋沢が三菱や三井、住友といった財閥をつくっていたら、日本の資本主義のかたちは今とは違ったものになっていただろう、とあとがきで書かれています。

一方、子どもが30人以上はいたというから只者ではありません。当時の風習で、いわゆるお妾さんを数多く持っていたようです。公私ともにスルーしがたい人物と言えます。


この本の端は多数の折り目がつきましたが、中でも印象的だった内容を1つだけ抜き出すならここでしょうか。
成功と失敗は、自分の身体に残ったカス
人は人としてなすべきことを基準として、自分の人生の道筋を決めていかなければならない。だから、失敗とか成功とかいったものは問題外なのだ。かりに悪運に助けられて成功した人がいようが、善人なのに運が悪くて失敗した人がいようが、それを見て失望したり、悲観したりしなくてもいいのではないかと思う。成功や失敗というのは、結局、心をこめて努力した人の身体に残るカスのようなものなのだ。
P.217
世間では成功者や失敗者がよく取り上げられ、成功するための方法、失敗しないための方法など、成功/失敗という見方の情報があふれています。そういうものを見る度に、関心して見習おうと思ったり、危機感を感じたりすることがありましたが、どこかに違和感もありました。

そこで成功や失敗というのはカスみたいなものだ、という一言に出くわし、ガガーン。思うことはいろいろありましたが、自分として納得のいく基準を持っているか否かが重要なのだと感じました。幸せと同じで、基準は人によって千差万別。自分の軸をつくり、持っているかどうかが、自分の生き方に必要なのだと思います。

その他、経営や働くことについて多くの示唆を得ました。もう100年近く前の話ですが、まったく古さを感じさせない1冊です。



『暮らしのヒント集』暮しの手帖編集部著

広告を載せずに60年も続いている雑誌『暮しの手帖』の連載が書籍されたものです。日々を美しく暮らすためのヒントが、469個も紹介されています。

内容は実に様々ですが、日々の何気ない暮らしで実践できることや考え方が紹介されています。放っておくとルーチン化してしまう日常ですが、ふと立ち止まって「これをやってみよう」とか、「そうか、そういう考え方もあるな」と思ったり、考えたりするきっかけをもらいました。

1個1個のヒントは100文字にも満たないものが主体ですが、1つのヒントについて半ページほど考え方が書かれているものもあります。私はふと気になったとき、適当にページを開いてヒントと出会う、というのが専らの楽しみ方でした。 

実践的なところでは、
383
起床の30分前にラジオや音楽をかけてみましょう。寝床でぼんやりと耳を傾けているうちに目が覚めてきて、気持よく起きることができます。
というものがあり、実践しました。実際のところ、タイマー式の音楽機器がなかったので、iPhoneの目覚ましアプリに音楽を設定したり、テレビをつけたりして代用しました。

やってみると、確かに以前よりも目覚めがスムーズになるのを感じました。テレビについては色々試した結果、民放の賑やかな感じの番組はあまり気持ちが良くなく、NHK等の淡々とした余計なBGMのない番組が良いと気づきました(好き嫌いがあると思いますが)。今のところNHK BSがベスト。笑

その他、考え方の面では以下が印象に残りました。
300
大変でしょうが、苦労は人を洗練させます。洗練された人には、和やかさ、やわらかさ、品格がそなわります。

私たちは、苦労を重ねた人の笑顔がどれだけ美しいものが知っています。不思議なもので、苦労にはその人を美しくする力があるのです。苦労を重ねた人にだけそなわる洗練は、人をしあわせにもしてくれます。
何かをよく知り賢い人ほど、言葉少なく控えめで、えばらず前に出ず、温和です。そういった人ほど、実は、人一倍の苦労を経験し、乗り越えてきているのです。
苦労はあなたを苦しめるものではない、ということを知りましょう。もし、あなたが、苦労をせず、苦労から逃げてばかりの生き方だったとしても、がっかりすることはありません。いくつになっても、遅すぎるということはないのですから。
このような価値観が通用しない場もあると思いますが、一人の人としては共感を覚える考え方です。ふと、過去に出会った方々の所作や笑顔を思い返しました。

誰しも何らか苦労をすると思いますが、苦労を前向きにとらえる考え方としても発見でした。「苦労は買ってでもしろ」と言いますが、それは人が洗練されていくための過程として欠かせない要素だから、ということなのでしょう。

この『暮らしのヒント集』は続巻も出ています。
決まりきった毎日がひたすら続いてる、と感じている方は、手にとって読んでみると、日常がちょっと変わるヒントが得られるかもしれません。



『マネジメント【エッセンシャル版】』P.F.ドラッカー

ビジネスの書籍としては各所で名著と言われるドラッカーの『マネジメント』、そのエッセンシャル版です。ドラッカーの本は何冊か読んできましたが、この本が今のところ一番刺さっています。(タイミングというのもありますが)

この本、読み進める度にウムーと立ち止まってしまい、なかなか読み終わりませんでした。一回通読して読み返すという方法もあったはずですが、読み飛ばすことができないのです。

ゆえに、印象に残ったところを抜き出すのはなかなか難儀です。
この本の影響で、私が今年仕事をする中で度々意識したのは「成果」の二文字。そこに関連するものでは以下のようなものがありました。
成果を中心に考える
あらゆる組織が、事なかれ主義の誘惑にさらされる。だが組織の健全さとは、高度の基準の要求である。目標管理が必要とされるのも、高度の基準が必要だからである。
成果とは何かを理解しなければならない。成果とは百発百中のことではない。百発百中は曲芸である。成果とは長期のものである。すなわち、まちがいや失敗をしない者を信用してはならないということである。それは、見せかけか、無難なこと、下らないことにしか手をつけない者である。成果とは打率である。弱みがないことを評価してはならない。そのようなことでは、意欲を失わせ、士気を損なう。人は、優れているほど多くのまちがいをおかす。優れているほど新しいことを試みる。
P.145
反省すると同時に、勇気ももらえる一節でした。
今、改めて読んでみても「成果」というところでは、短期的な売上を気にし過ぎてしまっていたかもしれない、と反省してしまうなど。

私は今年、例年に比べれば新しいことに取り組んだ年でしたが、うまくいかないと思うことが多々ありました。もちろん、ある程度うまくいって、いい流れをつくる一助はできたかもしれないのですが、「卓越した成果」というところを目指すには、まだまだ今期よく取り組まなければならないと感じます。来年も引き続き、新しいことを試みる姿勢でいきたいと思います。

ドラッカーの本は経営に関する内容が多いように見えますが、組織で働く人なら、業界、業種、役職を問わず読む価値のある本ではないかと思います。



来年は…
どんな良い本との出会いがあるでしょう?
今年は小説をあまり読まなかったので、小説に少し意識的に触れていきたいと思います。正確には、今年は『坂の上の雲』を再読したのですが、8巻もあるので、これで今年の小説枠の時間をほぼ使いきりました。あとは『小説 上杉鷹山』。自分としては少し意外なのですが、歴史小説を中心に読みました。

みなさまも繰り返し読んでいる本などありましたら、ぜひ教えてください。
では、良いお年を。



2011年12月29日木曜日

2011年Web業界10大トピック 〜おせちの話から〜

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昨日、仕事納めでした。
かつては大晦日まで納まらないとか、正月またいでも納まってないとか、そんな光景もありました。職場に紙で神社をつくってお参りをしたりとか。懐かしい。

「2011年が終わるんじゃない。2012年が始まるんだ。」

という明言が私の目前をかすめましたが、今年は個人的に振り返りを大事にする1年だったので、Web業界の2011年を振り返ってみました。私はWeb制作会社に勤めているため、そちら側に寄っています。


No.10 おせち事件(炎上)

2011年のファーストインパクトは、広告と全然違うひどすぎる「おせち」の事件でした。2010年の大晦日から騒ぎが始まり、食べログ、2chまとめサイト、ついにはテレビと、お正月から大炎上。
販売したグルーポンも取りざたされ、2011年には流行が予想されたクーポンビジネスは、期待されたほどの盛り上がりはなかったように思います。

今年はTwitterをきっかけにした炎上が多数ありました。企業(自治体)が関係するところでは、
  • アディダス:従業員が契約スポーツ選手に対する不適切なツイートで炎上
  • ウェスティンホテル東京:従業員が芸能人のお泊りデートをツイートして炎上
  • 北海道長万部町:ゆるきゃら「まんべくん」が歴史認識で際どいツイートをして炎上
など。

炎上は組織にとってダメージなのはもちろん、従業員や関係者も人生を棒に振るといっても過言ではない顛末を迎えるものもありました。企業や従業員を守るため、「ソーシャルメディアガイドライン」を策定し、社内教育を始めた企業も多かったと思います。

企業のソーシャルメディア活用はもはや一般的になってきましたが、「リスク対策」の話は必ずセットで出てきます。私は昨年のTwitter全盛期から色々な案件に関わりましたが、守りの意味でも、攻めの意味でも、ソーシャルメディアに「土地勘」のある担当者が欠かせません。


No.9 経営者・企業の大きな動き

Web業界に限定できませんが、やはりAppleのCEOスティーブ・ジョブズの他界は、業界関係者に大小の影響を与えたことでしょう。制作・開発現場でMacを愛用する方は多いでしょうし、iPhone、iPadは私の職場にも溢れています。私自身、Web業界に入る原点はMacとの出会いだったと思っていますので、外しがたいトピックです。

企業関係では、
  • NHN Japan、ネイバージャパン、ライブドアが経営統合
  • GREEの躍進、グローバル展開の加速
  • DeNAの躍進、球団経営、南場社長の退任
など。

ソーシャルゲームで著しく業績を伸ばしているGREEとDeNAは今年存在感がありましたね。今やテレビCMが当たり前のように流れています。業界の躍進にともなってスマートフォン関連の人材不足が進み、新卒の年収が最大1,500万円というバブリーな一面が垣間見えることも。GREEとDeNAはちょいちょい衝突があるようですが…来年はどうなるのでしょう。

サイバーエージェントも、ネット広告代理業からスマートフォン関連事業に力を入れつつあるようですし、来年はますますスマートフォン関連企業が熱くなりそうです。


No.8 IE6、ついに爆発(ブラウザ関連)

Web業界にいる方なら殺意を覚えたことが二度や三度はある、と言っても過言ではないはずのInternet Explorer 6が、来年から自動アップデートされるとの発表がありました。
世の中では何かと苦しい話題の続いた2011年、2012年のWeb業界に一筋の光が差し込んでいると言えましょう。これで実家や知り合いの家のPCを密かにアップデートしていく、という(善意の)工作員活動からも開放されます。[謎]

個人的には自動アップデートがどれくらいの範囲と効力を持って実行されるのかが見えないため、今のところは心のなかでウヒヒと思う程度にしています。制作会社に勤める身からすると、お客様の企業にあるPCがアップデートされるかどうか?が、実務上の懸案であるのが正直なところです。

あとは
  • Google ChromeがFirefoxのシェアを抜く(全世界)
  • Firefoxが怒涛のバージョンアップ
など。

Google Chromeはスピーディな動作が素晴らしく、今年、私の周辺では利用率が急上昇しました。シェアでFirefoxを抜いたのは全世界の調査で、日本国内ではまだまだですが、長い目で見るとFirefoxを抜く日はそう遠くないかもしれません。

そんなFirefoxは、「どうした?」というくらい、今年はバージョンアップを重ねました。Chromeに対する危機感の表れなのか、何なのか。「親戚の子どもより成長が早い」とか、「アドオンが対応してないよぉ、うわぁぁぁぁん」とか、そんな声も聞こえてきました。


No.7 ソーシャルメディア

ざっくりですが、今年はこれなしには語れない年でした。
企業のキャンペーンサイト制作の多くにソーシャルメディアが絡んできましたし、「とりえあえず入れてくれ」という勢いだった印象すらあります。来年度の動きとしても、この傾向はまだ続くでしょう。代表的なところとしては
  • Facebook(今年の主役)
  • Twitter(昨年の主役)
  • mixi(企業活用としてはまだ…)
  • Google+(来年の注目)
  • LinkedIn(来年の注目)
今年はFacebookが主役だったのではないでしょうか。昨年はTwitterが主役でしたが、今年はもはや当たり前のレベルに位置づけられていた印象があります。来年は、とりあえずSEO効果を見込んでのGoogle+や、人事活用系のLinkeInが気になる存在です。

一方、国内大手mixiは
  • mixiページ
  • ソーシャルバナー(ナイキとタイアップ)
  • ソーシャルラジオ
  • Twitterとの連携強化
  • mixiゲーム
など、振り返ってみると色々な動きがあったと思いますが、個人的な実務レベルではまだ様子見状態です。

あとはfoursquareやロケタッチ、Facebook Placesなどの位置情報系も企業活用の事例が出ていましたね。来年は「O2O」(オンライン to オフライン)が注目ワードの一つですので、今年よりも飛躍するかもしれません。
マイナーどころではTumblrもちょっとずつ使われてきていますし、iPhone用のカメラアプリのInstagramを使ったキャンペーンもローソンが実施していました。


No.6 Twitter

No.7の「ソーシャルメディア」で入れてしまいましたが、だいぶ一般化が進んだという意味でTwitter。

やはり日本国内で脚光を浴びたのは3月11日の震災時でした。携帯電話や携帯メールがつながらない中、Twitterは連絡手段として有効に機能していたころが大きかったのでしょう。私の肌感覚としても、世間一般の方に広く認知されるようになったと感じます。著名人や芸能人の利用も一般化をあと押ししましたね。

最近のネタでは『天空の城ラピュタ』がテレビで放映された際、「バルス!」が瞬間ツイート数で世界記録を達成するなど、このネット界隈独特の盛り上がりは面白いですね。テレビとTwitterの相性は良いなと感じることが、今年はポツポツありました。

Twitterは今年5周年。リニューアルもありました。
最近では、
  • ブランドページ開始(一部企業のみ)
  • 新しい広告形態
  • 公式アクセス解析ツールの発表
などが記憶に新しいところです。
最後のアクセス解析ツールはその後どうなったのでしょう?


No.5 震災

3月11日、職場で一斉に鳴り響いた緊急地震速報の音が忘れられません。

企業が一斉にテレビCMを自粛したことからも分かる通り、Webサイト周りもキャンペーン関連の企画は一律見送り。広告、Web関連企業も大きな影響を受けました。一方、震災時(緊急時)のサイト対応について、深く考えられるきっかけにもなったことと思います。

震災や原発事故に関するWebサイトも様々できました。
  • 世界中から励ましのメッセージが届くサイト
  • ボランティアをマッチングするサイト
  • 募金ができるサイト
  • 放射能の影響を可視化するサイト
など、いろいろありました。

震災でTwitterの一般化が進んだ件はNo.6で書きました。東京電力や内閣を始め、企業や自治体もTwitterで情報発信するケースが多かったですね。情報源として評価される一方で、デマの流布を助長するといった側面もあり、メリット・デメリットの理解も進んだかもしれません。


No.4 HTML5+JavaScript+CSS3

震災という大きなくくりの直後に、いきなり細かい話に転換。
業界内では例えばGoogleが強力に推し進めることを宣言していた通り、数年前から注目されていましたが、具体的な事例が増えてきたのは今年からだったのではないでしょうか。業務レベルでは、昨年はほとんど耳にしませんでしたが、今年は耳にする機会が増えてきました。

ブラウザ依存の激しい技術ゆえ、実用性の面で課題があったと思いますが、スマートフォンに搭載されているブラウザが概ね対応していることもあり、スマートフォンの普及と比例して注目されつつあるように感じます。

スマートフォン向けのネイティブアプリを経験している企業にとっては、同技術を使ったウェブアプリに期待が寄せられている面もあるかもしれません。
ネイティブアプリはメンテナンスやiOS/Androidの別個開発等、運用やコストの面で投資対効果が得にくいと感じている企業が多いのではないでしょうか。もちろん、双方にメリット・デメリットがあるので一概には言えませんが、来年はウェブアプリの事例が徐々に顔を見せると思われます。


No.3 モバイル向けFlashの開発終了

Flashプレイヤーを提供するアドビ自身がモバイル向けの開発を終了し、HTML5に注力するとの発表を行いました。

一般ユーザーからするとどうでもいいことですし、Flashオワタなどと評するのもおかしな話ですが、業界的にHTML5のニーズが増えることを決定的に感じさせるニュースだったとは思います。

技術を提供する側としては、FlashなのかHTML5なのか、クライアントの目的や実現したいことを汲み取りながら、適切な提案ができるように両者の理解を深める必要があります。

新しい技術、新しいサービスが盛り上がるとき、得てして「◯◯を使って何かしたい」という手段の目的化が増えますが(それはそれで応えないといけないわけですが)、本来の目的を見失わないよう注意したいところです。Flashが有用な技術であることに変わりはありません。CityVilleが遊べないので、私はiPadを売り払いました。


No.2  スマートフォン

世間では「Androidってauのスマートフォンのことでしょう?」という話が出ているそうですが、今年はスマートフォンのユーザーが一般に広まっていった年でした。電車内を見ても、スマートフォンを片手にしている人が本当に増えたなと実感します。

各キャリアからの新機種発表も大半がスマートフォンです。キャリアにとってみれば、フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)よりも通信費が稼げる点で顧客単価が上がる以上、当然の戦略なのでしょう。インフラの負荷も増えますが。

年初頃のスマートフォンはワンセグやおサイフケータイの機能がないといったことがありましたが、最近は「全部入り」のスマートフォンが出始めています。ガラパゴスってなんだっけ?と。らくらくホンとスマートフォンの二極化が進むのでは、などと思ってしまいます。

Web関連は当然の如く影響を受けますが、スマートフォンの対応というと色々あって何をしたらよいのやら・・という悩みが多いようです。大きくは以下のような選択肢があるでしょうか。
  • アプリ開発
    ーネイティブアプリ
    ーウェブアプリ
  • サイト最適化
    ー専用サイト新規開設
    ー既存サイト改修
    ーCMSのカスタマイズ
    ーコンテンツ変換サービスの導入
それぞれメリット・デメリットがあり、実際にはさらにブレイクダウンされていくので確かに悩まれるのも無理はないかもしれません。企業が既に持っているコンテンツの資産状況も関わりますし、大規模なサイトほど中長期的な視点が必要です。

「スマートフォンの対応」と書きましたが、来年はタブレットの存在感も徐々に増してくるでしょうから、「マルチデバイス対応」と言った方が適切ですね。ユーザーの様々な閲覧環境に対応するための「レスポンシブ・ウェブデザイン」や、「UIデザイン」、「UXデザイン」というキーワードが、来年は今年以上に増えてくるでしょう。


No.1 Facebook

自分が仕事上置かれている立場も関係しているのですが、今年は毎日のようにFacebook、フェイスブック、FaceBook、フェースブック・・とこの単語を聞かない日はないに等しい状況でした。もうお腹いっぱいです。

早い企業は2010年から活用を始めていましたが、映画『ソーシャルネットワーク』の公開などもあってか、一般的な認知も拡大し、今年は企業の利用がだいぶ広がりました。Facebookの公式発表によれば、日本のアクティブユーザーは2011年9月で約500万人。いろいろな調査会社が数字を出していますが、恐らく1年で倍以上は増えたと思われます。

今年でだいぶ普及した感がありますが、来年前半もしばらくは企業利用の拡大期が続きそうです。

今後気になる点としては以下でしょうか。
  • Facebookアプリのスマートフォン対応
  • 写真へのタグ付、チェックイン等の活用、リアル連動
  • Facebookのポリシー・ガイドライン

Facebookアプリのスマートフォン対応
1点目。Facebookアプリの事例で、「アプリの利用やプレゼント応募がスマートフォンからできない」というユーザーの声が散見されました。
一部事例ではスマートフォンに対応していますが、ユーザー数増加と共に、来年はもっと必要性が増していくでしょう。スマートフォンへの対応いかんで、「いいね!」やコメントの数が変わってくるはずです。

写真へのタグ付、チェックイン等の活用、リアル連動
2点目。Facebookの機能として写真のタグ付やチェックイン等がありますが、企業の活用事例としてはまだこのあたりをつかった取り組みは皆無か少数派です。
Facebookユーザーのリテラシーと比例してくるところかもしれませんが、来年はこのあたりの機能を使ったものがもっと出てくるのではないでしょうか。有楽町ルミネの事例では、リアルいいねボタンの取り組みがあったように、リアル連動の活用も増えていくように思います。

Facebookのポリシー・ガイドライン
3点目はちょっとお固いですが、今年出た主だった企業事例を見ていると、7割がた何らかFacebookのポリシーやガイドライン、利用規約に違反しているように感じました。
違反していても、多くの場合実害はないと思いますが、大手企業は多かれ少なかれ信用に関わるので最低限の注意が必要と考えます。コカコーラの「スゴイ自販機」アプリが開発アカウントの複数人使い回しで突如停止した、などというものはレアケースでありましたが。


まとめ
・・長かった。プライベートでこんなに長文を書いたのは久しぶりです。6時間くらいかかりました。普段からブログ書いている方を尊敬します。

結論としては、「ソーシャルメディア」と「スマートフォン」に集約される1年だったな、というところでしょうか。近しい業界にいらっしゃる方は今年1年、いかがだったでしょうか。

性格上新しいもの好きな私はそこそこ楽しんだ1年ですが、Facebook関連で開発をしている人たちは、日々変わるFacebookの仕様により、天然のアイシャドウを顔面に実装していたような気がします。お疲れさまでした。

来年の今頃は何を振り返っているのでしょう。


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2011年12月4日日曜日

「ありがとう」の反対語は「当然」

「ありがとう」の反対ってなんだと思う?と聞かれました。
ありがとうの反対?なんじゃろ?僕はとっさでしたので「無関心」?と答えましたがブーでした。
答えは「当たり前」
やって当たり前。出来て当たり前。家庭でも会社でも。
引用:はたしてそれはマーケッティングなのか?: しでかしちゃった改めありがとう。
何をきっかけに見かけたのか忘れてしまいましたが、
「ありがとう」の反対語は「当然」であるというお話。

「好き」の反対は「嫌い」ではなく、「無関心」という話に似ています。
共通するのは意識を向けているかどうか、だと思いました。
「好き」や「嫌い」は意識が向いていますが、
「無関心」は意識が向いていません。

冒頭の話も意識を向けるからこそ「ありがとう」なのであって、
意識を向けなければ「当然」となってしまいます。
みなさんの周囲にも「当然」が眠っていないでしょうか?
19.何事においても「当然」だと思い込まないでください。
人生は贈り物です。
情報も贈り物です。
あなたは他人にはできないことができます。
あなたは他人の知らない知識をたくさん持っています。
あなたに住む家があることは当然ではありません。
あなたが事故に合わないのは当然ではありません。
あなたの目の前に食べるものがあるのは当然ではありません。
あなたに恋人がいるのは当然ではありません。
あなたに家族がいるのは当然ではありません。
あなたが日本に生まれ、今この時代を生きていることは当然ではありません。
ただ、それが当然だと思い込んでいるから、気づかないだけです。
感謝の気持ちを忘れると、ある日突然目の前からなくなります。
引用:20代が日本で夢を叶えるために気づいておきたい20の事実。
今生きて、生活をしている中で、
何ら気にとめていないような当然のことが、いかに有り難いか、
少し立ち止まってみるとよく分かります。
私生活においても、仕事においても。

ありがとう、という言葉で考えると、人に対する感謝をイメージしますが、
実は人ばかりではなく、今自分が置かれている状況にも言えます。
日本という国に生まれてきたことも感謝すべきことです。
海外に行くと日本がいかに恵まれているか、毎回感じます。

感謝するには、ある程度の想像力や考える幅が必要かもしれません。
海外に出ると、日本では当然のことがいかに有り難いか、それが見えるのと同様に。

自分の周囲の人や状況について、一度深く想像を巡らせてみると、
自然と感謝の気持ちが湧いてくるように思います。

めまぐるしい日々のときこそ、立ち止まって考えたいことです。

2011年11月15日火曜日

質問が人を動かす(アクションラーニングメモ)


先月から「アクションラーニング」なる手法のコーチ養成講座を受けています。

「質問会議」なるものをやっており、問題を提示する人に対して、参加メンバーで質問をしまくって課題解決を図る、というイメージです。意見は歓迎されず、ひたすら質問に重きをおくという特徴的なスタイル。自己主張大好きっ子は、きっと悶絶します。

このアクションラーニングという手法からは、

「質問が人を動かす」

ということを感じます。


このコーチ養成講座の課題で『実践 アクションラーニング入門』という本を読んでいたのですが、この内容とD・カーネギーの『人を動かす』が不意にクロスしました。具体的には、以下。

「質問は、尋ねられた当人を自分は重要視されているという気にさせる。」

「人間の持つもっとも根強い衝動は、重要人物たらんとする欲求である。」


上段が『実践 アクションラーニング入門』から、下段が『人を動かす』からの引用です。下段の要旨としては、 自己の重要感を満たしてあげることが、人を動かす唯一の方法だ、とつながっていきます。

上記2つの意味を単純につなげてしまえば、「質問が人を動かす」と言えるなと思ったのです。勉強不足ですが、コーチングの世界では一般的なことなのかもしれません。


ただ、質問は、人に対してそんなに重要感を与えるだろうか?
…とちょっと疑問には思いました。

冷静に考えてみると、自分という人間に興味を持たれなければ、通常質問はされません。人からいろいろと質問をされれば、「あ、この人は自分に興味を持ってくれているんだな。」と感じるのが自然なことと思います。

それが、このアクションラーニング(質問会議)では、複数のメンバーから集中的に質問されるため、自己の重要感をこれでもかと満たされる場なのではないでしょうか。自信を失っている人に、勇気を与える場にもなるかもしれません。


「質問」の二文字には、いろいろな効用があるとされていますが、質問の良いところは、質問されると自分で考えて、発言なり、アウトプットすることです。

「◯◯しなさい」と闇雲に言われるよりも、「どうしたら◯◯ができると思うか?」と質問され、自分で考えた方が、その後の行動が変わってくるのは明白です。
前者は強制力があれば機能しますが、限度があります。後者は質問された本人自身が、自分の中で考えを巡らせた上で行動するため、”腹落ち感”のようなものがベースにできます。

「質問」について掘り下げるとまた長くなってしまいますが、人に動いてもらう必要のある立場の方は、この「質問が人を動かす」を意識してみると何か変わるかもしれません。

私もかつてWeb制作のディレクターやチームリーダーを務めていたとき、このあたりの学習がもっと深くできていれば、今頃また何か変わっていたのかもな、と思う次第です。

※ 

文中で触れた『実践 アクションラーニング入門』はなかなかとっつきにくい内容なので、「アクションラーニング」って何?「質問会議」って何?という方は以下の本がおすすめです。



D・カーネギーの以下は、教養として読んでおくべきです。…などと言う私はビジネス書に侵されているのでしょうか? いろいろなところで触れられる本ではありますので、ネタとして知っておいて損はありません。

2011年11月14日月曜日

不要な本、Twitterで生き伸びる。

旅立つ愛読書の図

大学で1回、社会人で1回読んだ『坂の上の雲』。

8巻もあって場所をとるので、そろそろ処分しようか・・とTwitterで漏らしたところ、まさに今読みたい!という方が降臨されたので、その方にお譲りすることにしました。

因みにお会いしたことがない方です。現代的ですね。さすが某社の経営者に「ソーシャル坊ちゃん」と呼称されるだけある私です。(深くは追求しないでください)

自分が不要になったものであっても、今まさに必要としている方に、タイムリーに引き継げるのは良いですね。物の価値が生きたまま継承できるのです。



(※お写真、拝借させていただきました)
最後の1文を特に読んでいただきたい

今回の件で接触するまで知らなかったのですが、お譲りすることになった方は同い年で、業界も一緒でした。いつフォローし合ったのかも分かりませんが、不思議なご縁ですね。またどこかでお会いしたいものです。

2011年10月10日月曜日

今の生き方につながったMacとの日々

Steve Jobsが10月5日に亡くなってから、Apple Storeの前には連日献花が絶えないようです。上の写真は銀座店のもの(10月10日撮影)。メッセージやかじったリンゴも置いてありますね。
※SoftBankショップの前に献花している人もいたらしく、「そっちの社長はまだ生きてるからww」というツッコミをTwitter界隈で見かけましたヽ(´ー`)ノ

私が最初に訃報を知ったのはTwitterでした。朝、Twitterを見ると、驚きや落胆の言葉と共に訃報の事実が。AppleのサイトもJobsの写真を全面に出したビジュアルに切り替わっていて、なんとも言えない気持ちになりました。

亡くなった日以来、こんなにSteve Jobsを尊敬している人がいたんだな、と思うほど周囲の反応が大きく、それもまた驚きでした。それがApple Store前の献花に現れているように思います。


パソコンとの初めての出会い
今はウェブ制作会社に勤める身で、今年でもう7年目。元をたどると、小学校5年生くらいのときに学校でパソコンに触れたのが原点です。学校にあったのはNECのPC-98だったでしょうか。コマンドで動かすのがメインの機械でした。

そのあたりからパソコンに興味を持ち始めました。その空気を察したのか、もしくはもともと興味があったのか、父がパソコンの雑誌を買うようになり、私も分からないながらによく見ていました。中でも子ども心ながらに魅了されていたのがMac。小学校の卒業文集にもパソコンの絵を描きました。


Hello, Mac!
そうして、たしか中学1年になった頃と思いますが、父がついにMacを買いました。それがPowerBook 540c。実質、私が独占しておりましたが。




当時の定価で698,000円という驚愕のお値段。今ならMacBook Airが7台は買えます。重みや厚さも、3台分くらい。定価で買うことはなかったかもしれませんが、それにしても高価な買物には違いありません。中学生ごときの身分に、このような機械を与えてくれた両親には感謝しております。
(追記)※Facebook内でセレブ説が囁かれましたが、我が家は普通のサラリーマン家庭です。車を持たない家なので、車を買った!ぐらいの勢いです。きっと。


今の生き方につながったMacとの日々
自分のパソコンとしては、このPowerBook 540cが初めての相棒でした。

パソコン通信もインターネットもこのマシンから。
HTMLを初めて書いて、Netscapeで表示させたのもこのマシン。
初めてのホームページをつくって公開し、様々な発見や出会い、失敗、小遣い稼ぎを経験したのもこの1台のマシンからでした。(莫大な電話代請求で大目玉を食らったときは絶望的な気持ちになりました)
HTMLについて言うなら、tableの背景に画像が設定できるようになって、一人で「うおー」と興奮したのも良き思い出です。一部の方にしか通じないですね。すみません。

今も大して変わりませんが、よくも飽きずに触っていたなと思うほど、いじり倒していたように思います。当時はWindows95の時代であり、世間的にはそちらの方が注目の的でしたが、必然的に手元にあるMacを愛していた次第。当時Steve JobsはAppleにいなかったんですけどね。ただ、戻りつつある時期でした。

起動画面を見ると当時の記憶がよみがえります。懐かしい。


Connecting the dots.
そんなこんなで、気づけば中学生当時のMacとの出会いと体験が、今の仕事につながってきています。あのときMacが自分の目の前になかったら、またちょっと違った人生を歩んでいたんじゃないかな、と言えるくらいの存在でした。

Steve Jobsのスタンフォード大学でのスピーチは有名ですが、その中に"Connecting the dots"という話があります。
将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。(出展)「ハングリーであれ。愚か者であれ」 ジョブズ氏スピーチ全訳:日本経済新聞
Macとの出会いという点は、思いもよらず自分の今の仕事に結びつく点になっていました。今の仕事は決して楽ではない側面はありますが、やはり元は好きで没頭した経験があるから、失敗や挫折を経験しても、立ち直ることができているのかなと思います。

今の生き方につながる原体験を提供してくれたMacには感謝しています。
本当はもっとSteve Jobsの思想とか、そういうかっこいい側面から書いてみたかったのですが、自分にとっては出会ったときの存在自体が大きかったのです。

今までありがとう。
そして、これからもお世話になります。


このスピーチは何度も見ました。

「ワクワクをありがとう」のメッセージも

Apple Store 銀座にて 2011年10月10日(月)撮影