最近、思いを伝えていますか?(六本木アートカレッジ2012 『大宮エリー的「言葉の力」』より) | 不問日報-号外

2012年10月19日金曜日

最近、思いを伝えていますか?(六本木アートカレッジ2012 『大宮エリー的「言葉の力」』より)

今回は、前回書いた「みんなはアートを観て何を考えてるんだろう?」の続きです。続きというよりも、いいなと思ったお話をもう1つ共有します。

大宮エリーさん(以下、面識もないのに「エリーさん」とする)は元電通のコピーライターで、言葉の仕事をされている方です。この「言葉の仕事」に通じる原体験となるエピソードがいいお話でした。

エリーさんが「これはあまり人に話さないんですけど・・」とおっしゃっていたので、あまり知られていないエピソードかもしれません。
モデレーターの方が「オフレコですか!?」と聞かれていましたが、「いやいや、そんなことないんですけどね。」と返されていたので、きっと書いても大丈夫でしょう。きっと。たぶん。



先生の生き方を変えたエリーさんの手紙


Letter
Letter / aprilandrandy


エリーさんが通われていた高校に、生徒たちみんながボイコットしている授業があったそうです(現代社会だったかな・・記憶が正確ではないのですが)。想像するに学級崩壊みたいな状態なのかもしれませんが、生徒たちがあからさまに授業を聞いていない態度だったのでしょう。



生徒たちが授業をボイコットしている中、エリーさんはその授業がおもしろいと感じていたそうです。ただ、エリーさんは当時いじめにあっており、授業中に質問をするようなことはできず(それでまたみんなにいじめられてしまうから)、授業後に先生の後を追いかけて質問をしていたのだとか(なんて健気なんでしょう・・)。

どれぐらいの期間ボイコットされていたのかは分かりませんが、その先生は結局高校を辞めて、実家へ帰ってしまいました。

こんな状況になってしまったら、あなたならどうするでしょうか?

ああ辞めてしまったんだな・・
あんなにボイコットされたらしょうがないよな・・
そう思って、過去の記憶になっていってしまうかもしれませんね。
私なら、そうなっていたかもしれません。

エリーさんは、そこで先生に手紙を書いて送りました。
授業をおもしろいと思っていたこと、生徒たちも実はおもしろいと思っていたこと、そんなことを伝えたそうです。

その先生からはその後特に返事はなく、月日は過ぎます。

手紙を送ってから半年ほどした頃、エリーさんを呼び止める声がしました。
あの辞めてしまった先生です。

先生の話を聞くと、
「エリーさんの手紙を読んで、もう一度チャレンジしてみようと思った。」
と先生の道に戻られたそうです。
それも、元いた同じ高校に。

言葉の力ってすごいな。
ひとりひとりの人生を変えてしまうことがあるんだ。

これがエリーさんが言葉の仕事についた原体験と言えるお話だそうです。

ただ、エリーさんはその後薬学部へ進学されており(お父さんの病気を治したいという希望から)、このエピソードがあって言葉の仕事へ行こう、と直接結びついたわけではないそうです。今思えば、ということなのでしょうね。




思いを伝えると、ドラマチックになる。


講義の最後に質疑応答があり、こんな質問がありました。

「会社で、自分は何を考えているか分からないと思われており、会社を急に辞めるんじゃないか?と思われている。実際は会社が好きなのに誤解されてしまったいるが、どうしたらいいのか?」

エリーさんの回答はこうでした。

「それをそのまま伝えればいいんじゃないですか?」

直球ですね。
先の高校時代のエピソードからも分かるように、まさに「思いを伝える」です。

もちろん、いきなり改まって言うのもおかしいので、飲みに誘って、そこでお酒の力もかりつつ言ってみるといいんじゃない?といったお話もありました。場所を変えてみる、というのはよいですね。

エリーさんいわく、「思いを伝えるとドラマチックになる」。
ときには言葉を人を傷つけてしまうこともありますが、伝えないことには変わらないことも多々あります。本当に変えたいと思うのなら、伝えることから始めようよ、そんなメッセージを私は受け取りました。




秘密にしていることを伝えると、人はよろこんでくれる


これはエリーさんの講義の後で受けた、松浦弥太郎さんの講義でのお話ですが、

「秘密のこと、自分しか知らないことを伝えると、人はよろこんでくれる。」

というものがありました。(松浦弥太郎さんのお話は「書くこと」の文脈でしたが、これはまた次回書きます。たぶん。)

思いを伝えるということは、伝える相手をよろこばせること。
慎重に話さなければいけないことでも、相手のことを考え、ポジティブなことに結びつくものであれば、きっとマイナスにはならないでしょう。「俺はお前のことが実は大嫌いなんだぜ〜?この野郎〜。」みたくワイルドなことに挑戦しない限りは。

普段思っているけど伝えられていないこと。
誤解されてしまっているかもしれないこと。

そんなことが、身の回りにきっと一つや二つはあると思います。
それは何でしょうか?
それを決めて、お茶やお酒の席で「今日はこれだけは伝えてみよう」と思って望むと、そこから何かが変わっていくかもしれません。




最後に私の小さな秘密


正直なところ、こういうのは私自身の苦手分野です。

わざわざ秘密にしているつもりはありませんが、私はどうも聞き役に回る癖がついてしまっていて、自分の話をする習慣がありません(ただ忘れっぽいだけかも)。子どもの頃も、家に帰って「今日はこんなことがあってね〜」と話すことも稀でした。

率直に言って、どう話したらいいのかがよく分からないのです。こんな性格のおかげで人間関係が一歩踏み込めなかったり、勝手に距離を感じてしまったり、そんなこともありました。

ただ、この手のことを考えたり、人に気づかせてもらったり、僕自身について興味を持って聞いてくださる方がいたり・・そして今回の講演を聞いたりして(不思議とつながる)、最近はだいぶ意識が向くようになりました。無意識から意識に向かえただけで、自分にとっては意味があります。

普通の方からすれば、なんてことないことで精神をすり減らしている私ですが、関係各位におかれましては、引き続き生あたたかく見守っていただければ幸甚です。

そういうわけで、自分の小さな秘密を一方的にお伝えしました。
話す以外にも、書くという手段もあります。

あなたは誰に、何を伝えますか?